飲食店を経営されている皆様、これから開業されて飲食店を経営する予定の皆様、飲食店専門の公認会計士・税理士の梶田です。
4月に飲食店を開業するために必要な資金のお話として掲載した「飲食店を開くにはいくら必要?~ひとりではじめる飲食店の開業資金について~」の続きとなります。
飲食店の開業を考えている方へ向けて、開業資金について、実際の資金調達の方法や、その金額などを飲食店の事業計画書作成支援でよくご質問頂く内容を質問形式でまとめています。Q1からQ3は前回お答えしたので、まだの方は是非そちらからご覧ください。
Q.4 個人事業主として飲食店を開業するには税務署に対してどんな手続きが必要?
A.多くの場合に必要となる書類は、「開業届」、「青色申告承認申請書」、「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」などです。
① 「個人事業主の開業届」
個人事業主として開業する場合には、個人事業主であると認めてもらうための届出が必要です。これは、一般的には開業届といわれているもので、開業から1ヶ月以内にご自身の所轄の税務署に提出をします。開業届を提出しなくても罰則はありませんが、コロナ関連による営業時間短縮要請や休業要請に伴う協力金や各種給付金等を申請するにあたり、必要な書類となる場合が多いので、期限内に提出することをおすすめします。
② 「青色申告承認申請書」
確定申告で、青色申告をする場合には必ず提出が必要です。青色申告とは、所得税の確定申告の際に、一定の要件を満たした場合、最大65万円の特別控除などを受けることができます。また、損失がある場合には損失額を翌年以後3年間にわたって繰り越して、各年分の所得金額から控除できる制度があります。白色申告に比べて、複雑な帳簿にはなりますが、節税効果を得ることができます。「複雑な帳簿」と記載しましたが、市販の会計ソフトを利用している場合や税理士に記帳を依頼している場合は要件を満たすケースが多いと考えられます。
③ 「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」
従業員を雇っている事業者の方は、従業員に支払う給与や税理士に対して支払う報酬のうち、所得税を天引きしなければなりません。この差し引いた源泉所得税は、原則として支払った月の翌月10日までに納める必要があります。従業員の少ない個人事業主にとっては、この毎月納付が負担となるので、給与の支給対象となる従業員数が常時10人未満である場合には、納付を年2回にすることができる特例があります。
この特例を受けたい方は、上記申請書を所轄の税務署に提出する必要があります。
このほかにも、青色申告書を採用している個人事業主の方が、親族への給与を経費として処理するためには、一定の要件を満たした上で、「青色事業専従者給与に関する届出書」を提出することで、必要経費に算入することができます。
税務署に関する届出の詳細な手続きについては、税理士又は所轄の税務署にお問い合わせをお願い致します。
法人設立をお考えの方・税理士による個別相談をご希望の方は、下記相談フォームよりご相談ください。
Q.5 融資は申し込んだ場合、どのくらいで入金される?
A.各金融機関や各支店により異なりますが、申請から融資実行まで目安として1ヶ月から1ヶ月半程度の時間がかかります。
日本政策金融公庫を例に挙げると、申請から1~2週間後に面談が行われ、さらにそこから1~2週間をかけて審査をします。
そして、審査が通り必要な書類を作成したのちに不備がなければ1週間程度で指定した口座に振り込まれます。この通り、融資には順調に進んでいても1ヶ月弱の時間がかかってしまいますので、開業される方で融資を受ける予定の方は、なるべく早く申し込むことをおすすめします。
また、申し込んでも必ず融資を受けられるわけではなく審査を通過することが必要です。創業計画書は開業時の融資を申し込む上で、重要と言われている書類の1つです。融資を受けられる確率を高めるためにも、事業の方向性や計画性を明確に示す創業計画書の作成が必要です。なるべく早くに融資を受けるポイントとしては、必要になり得る資料や書類(例:設備に関する見積書など)を早めに準備しておくと良いと思います。
Q.3 創業計画書には何を書くの?
A.ご自身のコンセプトを明確にした事業内容と金銭面の計画性について書きましょう。
創業計画書とは飲食店を開業するために金融機関から融資を受けるに当たり、事業内容と収支計画をまとめた書類のことです。
Q5で述べたように融資を受けるためには必要不可欠の書類ですので、金融機関の信用を得るためにも嘘偽りなく、自分の飲食店開業に対する思いやセールスポイント、事業の見通しを分かりやすく織り込む必要があります。
また、創業計画書は、融資のためだけに活用されるものではありません。創業計画書の作成を通して、開業を予定する経営者の方が頭の中で思い描いているコンセプトや夢を、明確にすることができます。事業の途中でゴールを見失わないためにも、融資を受ける予定がない方も、創業計画書を作成された方が良いかと思います。
特に作成するのに時間がかかる主な項目は、日本政策金融公庫の創業計画書を例に挙げると下記の項目です。
・3 取扱商品・サービス
提供する料理や金額がある程度固まってきたら、お客様に出すメニュー案を作成してみましょう。その際、金額を税込み又は税抜きのいずれかで決定します。自分のメニュー案が税込みか税抜きかを意識して売価を決定しましょう。
・7 必要な資金と調達方法
まずは事業に必要な資金を洗い出してみましょう。その上で、どのくらいの資金が必要になるのかが明確になるため、いくら借入れが必要なのか見えてきます。
・8 事業の見通し(月平均)
売上高ももちろん重要ですが、事業に必要な日々の原価や経費について他店を参考にするなどして網羅的に把握することが必要です。
また、日本政策金融公庫のホームページに創業計画書の飲食業版の手引きや記入例があります。書き方が分からない方は、是非参考にしてみてください。
今回は~飲食店の開業資金について~Q4からQ6まで記載しました。今回の記事やその他の記事でご不明な点、またより詳細な内容を知りたい方は、別途相談フォームよりご相談をお願い致します。
▶ 筆者紹介
飲食店専門 公認会計士・税理士 梶田将隆
国立大学卒業後、27歳で公認会計士登録。大手監査法人で金融機関及び製造業を中心に幅広く、かつ数多くの上場会社の監査を担当。その経験を活かし会計指導の他、在庫管理及び原価管理方法などの制度会計以外のアドバイザリー業務を行う。また、セミナー講師も担当し80名の経理担当者から高評価を得る。
コロナ禍においては各種給付金の申請サポートで100店舗以上を無料で実施。現在は飲食店専門の公認会計士・税理士として開業時の事業計画書の作成支援から、その後の会計顧問まで受嘱している。