飲食店を経営されている皆様、これから開業されて飲食店を経営する予定の皆様、初めまして、飲食店専門の公認会計士・税理士の梶田です。
2022年5月に開催された株式会社マルト水谷主催の「FOODNAVI2022」で特別セミナーの講師を担当させて頂きましたので、その概要を記事にしていきたいと思います。
本記事では、セミナーで講演をした中で、「税理士が教える!コロナ禍でも飲食店が利用できる補助金解説」についてダイジェストでお伝えします。
記事の最後に実際のセミナー動画へのリンクがありますので、ぜひ最後までお読みいただき、興味があれば動画もご覧頂ければと思います。
「事業再構築補助金」と「小規模事業者持続化補助金」
2020年3月以降、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、多くの飲食店の皆様が国や自治体からの休業・営業時間短縮要請などにより、経営に大打撃を受けているかと考えます。そのような状況下で沢山の飲食店の皆様が利用されたのが、要件を満たした上で申請すれば、多くの場合は給付される国からの給付金(例:持続化給付金・家賃支援給付金など)や県からの休業・営業時間短縮要請に伴う協力金です。
今回はこのように要件を満していれば給付される、「給付金」や「協力金」ではなく『補助金』について、
その中でも特に飲食店の皆様が新規出店等を検討される際に利用する可能性が高い「事業再構築補助金」と「小規模事業者持続化補助金」を取り上げています。
解説の流れは以下のようになります。
①補助金とは?時短要請等の協力金・給付金との違い
②自店の規模に応じて選ぼう~事業再構築補助金と持続化補助金補助金
③事業再構築補助金の概要
④持続化補助金の概要
では、それぞれ本記事にて簡単に解説していきます。
①補助金とは?協力金・給付金と何が違うの?
コロナ禍になり飲食店の皆様も国や地方自治体より金銭の給付を受けているように、多くの補助金や協力金、給付金が注目を浴びるようになりました。
言葉や国・地方公共団体から金銭を受けるという点では似ている補助金と協力金・給付金の違いについて解説します。
補助金:国などが特定の事業や研究の助長など、行政上の目的・効果を達成するために事業主等に交付する金銭。
協力金:時短営業のような国などの要請に従った事業者等に交付する金銭。
給付金:経済的に困窮した事業主等を救済するために交付する金銭。
つまり補助金には「このようなことに使ってください」という行政側の目的があり、いかにそれに沿った事業計画と立てる事ができるか?がポイントとなります。
②自店の規模に応じて選ぼう~事業再構築補助金と持続化補助金の概要~
補助金といっても世の中には様々な種類のものがあります。今回「事業再構築補助金」、「持続化補助金」の二つを取り上げた大きな理由は「飲食店さんにとって比較的使い勝手が良い補助金である」と考えているからです。
事業再構築補助金とは、新型コロナウイルスの感染拡大により打撃を受けた経済情勢の中、新商品・新サービスの開発、新市場の開拓、業態や業種の転換など、思い切った事業の再構築にチャレンジしようとする中小企業等を支援する補助金です。
また、「持続化補助金」とは持続的な経営に向けた経営計画を作成したうえで販路拡大や生産性向上などの取り組みをする小規模事業者にその経費の一部が補助されるというものです。
以下が簡単な判定基準となります。
判定① 小規模事業者の判定
常時使用する従業員の数が5人以下:持続化補助金・事業再構築補助金どちらも申請ができます。
常時使用する従業員の数が5人より多い:事業再構築補助金の申請が可能です。
判定②投資予定額による判定
今回取り組む事象に対する投資予定額が75万円以下か?:投資額が75万円程度のものであれば比較的難易度の低い持続化補助金。それよりも多い投資を考えている場合は事業再構築補助金を選びます。
セミナーでは、この2つの判定に加え私の主観も含めて両補助金の難易度を解説していますが、持続化補助金の申請に必要な「事業計画書」の多くは商工会の支援などを受けて作成すれば良いのに対し、事業再構築補助金では会計士や税理士、銀行のような専門家が作成するなど、採択の難易度が上がります。
③事業再構築補助金の解説
事業再構築補助金は、ウィズコロナ・ポストコロナの時代の経済社会の変化に対応するために、思い切った事業再構築に意欲を有する中小企業等の挑戦を支援することを目的としています。
従業員が
20人以下の場合は補助金100万円~2,000万円
21人以上50人の場合は100万円~4,000万円
の補助金額を受けることができます。
要件としては、
① 2020年4月以降の連続する6か月間のうち、任意の3か月の合計売上高が、コロナ以前(2019年又は2020年1月~3月)の同3か月の合計売上高と比較して10%以上減少していること。
② 経済産業省が示す「事業再構築指針」に沿った3~5年の事業計画書を認定経営革新等支援機関等と共同で策定することです。なお、この認定経営革新等支援機関とは税理士や公認会計士、弁護士のうち国の審査により認定された者のことをいいます。ちなみに私は支援機関認定を受けております。
事業再構築補助金を申請するに向けての準備の順番としては
① 自店での取り組みを明確にする。(採択事例分析)
② 今回取り組む事業に関連する補助対象経費を洗い出す。
③ 認定計画革新等支援機関と協力して文章を作る。
この順番に沿って準備を進めます。
詳細な解説はセミナー動画(約1時間)でしていますので、ご参考にしていただければ幸いです。(対象要件等は、変更等もありますので、必ず公募要領でご確認をお願い致します。)
④持続化補助金の解説
持続化補助金は、小規模事業者が今後、相次いで直面する制度変更(働き方改革、被用者保険の適用拡大、賃金引上げ、インボイス導入など)に対応するために取り組む販路開拓等の取り組みの経費の一部を補助することが目的です。
対象要件は、
① 策定した「経営計画」に基づいて実施する、地道な販路開拓等のための取り組みであること。あるいは、販路開拓等の取り組みとあわせて行う業務効率化(生産性向上)のための取り組みであること。
② 商工会・商工会議所の支援を受けながら取り組む事業であること。
となります。販路拡大の為のチラシの制作やポスティング、店舗改装などにも利用できます。
おまけ
最近の補助金の申請はjGrants(ジェイグランツ)を利用しなければいけない、または利用することにより加点されるケースが多くなっています。
今後、これらの補助金の申請に挑戦される方は、jGrantsにログインするために必要となるID「gBizID」 を取得しておくとスムーズに申請が可能です。
補助金の申請にあたっては申請する補助金の目的をきちんと理解しなければ、的外れな事業計画書になってしまい採択されません。自分のお店に合った補助金について、その目的を正しく理解し認定支援機関や商工会議所と共に事業計画を作成してみましょう。
この記事では「事業再構築補助金」と「持続化補助金」について解説させていただきました。より詳細な内容はセミナー動画にて行っておりますのでご興味のある方はご視聴下さい。
<この記事の著者>
梶田将隆(公認会計士・税理士)
国立大学卒業後、27歳で公認会計士登録。大手監査法人 で金融機関及び製造業を中心に幅広く、かつ数多くの上場会社の監査を担当。その経験を活かし会計指導の他、在庫管理及び原価管理方法などの制度会計以外のアドバイザリー業務を行う。また、セミナー講師も担当し80名の経理担当者から高評価を得る。コロナ禍においては各種給付金の申請サポートで100店舗以上を無料で実施。現在は飲食店専門の公認会計士・税理士として開業時の事業計画書の作成支援から、その後の会計顧問まで受嘱している。