2022.10.10

【飲食店開業資金】日本政策金融公庫のフォームに沿って解説【創業計画書の書き方】

飲食店を経営されている皆様、これから開業されて飲食店を経営する予定の皆様、初めまして、飲食店専門の公認会計士・税理士の梶田です。

 

今回は日本政策金融公庫に提出する創業計画書の中の【8.事業の見通し(月平均)】について、詳しくお話ししようと思います。

計画書を借り入れの為だけに作成するのではなく、ご自身のお店をずっと続けていく指標とするために事業計画書を考えていくというものです。

それでは、日本政策金融公庫の創業計画書に沿って【8.事業の見通し(月平均)】の記載ポイントについて解説していきます。よろしければ下記からダウンロードした創業計画書をご覧になりながらお読みください。

 

創業計画書 書式ダウンロード(日本政策金融公庫)
https://www.jfc.go.jp/n/service/dl_kokumin.html

 

事業の見通し(月平均)記載のポイント


①売上高の算出


売上高の基本となる計算式は、

ランチ:
客数(席数×回転率)×客単価=A

ディナー:
客数(席数×回転率)×客単価=B

(A+B) × 営業日数=売上高 で求めることができます。

まだ開業を考えている段階の方にとって、いきなりこの計算式に数値を当てはめて売上高を算定することは難しいかと思います。そこで、もう少し簡単に算出することができる代表的な売り上げ目標の設定方法をご紹介します。

1.家賃を10倍して算出

1つ目が家賃の10倍で算出する方法です。

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一般的な飲食店は売上高に対する家賃の比率を10%程度(都市部や商業施設では15%程度)に抑えることを目標とします。

これは言い換えると、人件費や原材料費、その他の経費を考慮した場合、この程度で収まっていないと利益を出すことが難しいという事になります。故に家賃の10倍を目標売上として、そこから必要な客数や客単価を算出します。

創業計画書に現実的に必要となるであろう売上高を入れることで、その後の実際の客単価やメニュー売価の設定が現実的かつ具体的なものになります。

現在、飲食店を経営されている方は、家賃が売上の10%程度に収まっているか確認すると良いと思います。

 

2.目標坪売上から算出

2つ目が、月坪売上×坪数による目標月坪売上を算出する方法です。

この方法では、家賃相場や店舗の大きさの違いに関係なく、自店の適正な売上高を算定することができます。この数字が大きければ大きいほど、店舗の面積に対して効率よく売上が発生しているといえます。

開業されて間もない方は、月坪売上15万円を目標として、全体の売上を考えてみましょう。

先に目標となる全体の売上高を算出してから、想定する席数や回転率などで割り戻すことで、必要となる客単価が見えてきます。メニューの価格決めに悩んでいる方は、この客単価を元に決めていくことで、より失敗をしにくくなると思います。

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また、既にメニューの価格や客数・回転率について考えられている方は、基本となる計算式に沿って、現状どれくらいの売上高を見込むことができるのか。そして、そこから以下に記載する原価・経費を差し引きどれくらい手元に利益として残るのかを計算しておくと良いと思います。

そして、売上高の右の欄には、開業初年度と2年目の売上を比較できるように、開業から1年後の目標を定めましょう。開業後1年で何を変えていくか、自分の事業プランを明確にし、売上予測をしましょう。
(例:開業してから、1年後にデリバリー・テイクアウトを開始する等)

 

②売上原価(仕入高)の算出

売上原価は、売上高×原価率で求めることができます。

1.原価率は30%が一般的な指標

飲食店における原価率は、一般的に30%が指標と言われています。しかし、全てのメニューについての原価率を30%にする訳ではなく、お店全体の売上に対する原価率を考え、バランスを取りましょう。

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お店の看板商品はお値打ち商品としてお客様をお店に呼ぶためであれば、原価率を高めに設定しても、原価率の低いサイドメニューやドリンクを組み合わせることで、全体のバランスを取ることができます。

自店のコンセプトを元に、看板商品となるものがあれば、まずは看板商品の原価率から考えていきましょう。

以下の表のようにメリハリのある原価率設定を心がけると良いと思います。

原価率 商品数割合 概要
40% 1 お値打ち商品としてお客を店に呼ぶ役割
35% 2 お値打ち商品としてお客を店に呼ぶ役割
30% 4 原価率設定の目標商品
25% 2 利益商品そしておすすめ商品で注文を目指す。
20% 1 利益商品としておすすめ商品で注文を目指す。

2.業態によって原価率設定をコントロール

お店の業態によっても基本となる原価率が異なります。初めは30%を基準にして調整をしていくと良いと思いますが、30%に捉われる必要はありません。

セルフサービスやテーブルオーダーを使うカジュアルな業態の場合、人件費を低く抑える代わりにウリの商品には原価を掛けるなど、実際の飲食店では、20%のところもあれば40%以上の飲食店もあります。自分自身のお店のコンセプトに基づき、原価率を決定しましょう。

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③人件費の算出

売上原価と並んで飲食店経営の大きなウエィトを占めるのが人件費となります。

1. 実際の店舗運営を想定して必要人員を算出

項目 指標
ホール人数(満席時) 4~6テーブル(組)に1人
客単価の高い飲食店 最大4テーブルで1人
ホール人件費:キッチン人件費 1:1

まずは、実際の店舗運営を想定した勤務シフトを作成してみましょう。

一般的に、ホールは4~6テーブル(組)に1人、キッチンは1つの調理器具(焼き場、揚げ場など)に1人のスタッフが適正といわれています。しかし、業態や店舗の状況、店内のレイアウトによっても必要となる人数は大きく異なります。店舗を運営していく上での最適な人数は、お店が忙しい時間帯やスタッフの作業能力なども考慮して判断していく必要があります。

 

2. 必要人員から人件費を算出

必要な従業員の数が分かったら、時給×1人当たり勤務時間×日数×必要な人員を基にして、人件費を計算してみましょう。

また、実際の店舗運営を想定しても、人件費が多くの割合を占めるようでは、サービスに比重を置いているとはいえ適正ではありません。

飲食店における人件費は20%~30%が目安とされています。算出した売上高から、人件費を割り戻し、適正かどうか見合わせてみましょう。ご自身の想定する人件費を大きく超えてしまう方は、店舗運営の見直しが必要であると思います。自動化やマニュアルの作成などで、人件費率を見直しましょう。

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こちらは、日本政策金融公庫が開業される方に向けた「創業の手引き+」(飲食版)に記載している業種別の原価率・人件費の目安です。このように業種によっても数字が大きく異なります。自店の業種に当てはめるなど、参考にしてみてください。

*日本政策金融公庫「創業の手引き+(飲食版) 再編・加工
  寿司 食堂 日本料理 酒場 中華 うどん 喫茶
原価率 44% 37% 37% 32% 34% 33% 32%
人件費率 29% 33% 32% 35% 33% 36% 35%
 

④その他の経費

飲食店では、大きく分けて、上記の仕入、人件費の他に家賃・水道高熱費、販促費などの経費が挙げられます。
この他にも、レジの月額費用やごみ処理代、Wi-Fi代、損害保険料、振込手数料といった1つ1つの金額は小さくても、毎月経常的に発生する費用も多数存在します。
そのため、事業に必要な日々の原価や経費について他店を参考にするなどして網羅的に把握することが必要です。開業されるお店にどれくらいの経費がかかるか分からない方は、お店のコンセプトやオペレーションを元に必要な経費を一緒に考えていきましょう。
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個人事業主の場合は、売上高から仕入や人件費、経費を差し引いた利益から税金や借入の返済額を支払い、そこから事業主の分の人件費や生活費が支払われることになるので、そこも考慮した見通しを考えることが必要です。

今回は、日本政策金融公庫の創業計画書を元に、【8.事業の見通し(月平均)】の作成ポイントについてお話しさせて頂きました。
事業計画書の作成方法や開業、経営にあたっての不安点など気になるご質問がある方は、別途相談フォームよりご相
談をお願い致します。

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<この記事の著者>

梶田将隆(公認会計士・税理士)

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国立大学卒業後、27歳で公認会計士登録。大手監査法人 で金融機関及び製造業を中心に幅広く、かつ数多くの上場会社の監査を担当。その経験を活かし会計指導の他、在庫管理及び原価管理方法などの制度会計以外のアドバイザリー業務を行う。また、セミナー講師も担当し80名の経理担当者から高評価を得る。コロナ禍においては各種給付金の申請サポートで100店舗以上を無料で実施。現在は飲食店専門の公認会計士・税理士として開業時の事業計画書の作成支援から、その後の会計顧問まで受嘱している。