飲食店を経営されている皆様、これから開業されて飲食店を経営する予定の皆様、初めまして、飲食店専門の公認会計士・税理士の梶田です。
今回は、飲食店の方からよく聞く失敗事例をもとに、どんな準備をしていけば成功に近づくのかという視点からポイントをご紹介します。
よく聞く失敗例
失敗事例 | 解決方法の例 |
資金調達の失敗 | 1. 事業計画書の作成 |
資金計画が曖昧でどんぶり勘定に | 1. 事業計画書の作成 |
お金の管理に失敗 | 2. 資金繰り表の作成 |
(失敗事例)
資金調達の失敗/資金計画が曖昧でどんぶり勘定に
(解決の方向性)
1.事業計画書の作成
事業計画書は融資・借り入れを受けるためだけに必要と思われがちですが、それ以外にも重要な役割を有しています。
なぜなら事業計画書作成には、ターゲットやコンセプト、強み、開業費用、資金繰り、売上の予測など多くの項目を織り込む必要があるため、この事業計画書がしっかりと検討された上で作成されていれば、失敗事例への準備はある程度は取られることになるからです。
さらに、自店のコンセプトを基にして事業計画書を書くことで、自分の想いが明確になっていくため、飲食店の経営が成功する確率も高まると思います。
具体的には、
・創業動機
・事業経験
・商品、サービス
・取引先、取引条件
・必要な資金
・調達の方法
・事業の見通し
などの記入項目がありますが、その中でもよく相談をいただく
① 取扱商品・サービス
➁ 必要な資金と調達の方法
こちらについて簡単にチェックポイントを記載します。
なお、日本政策金融公庫の事業計画書のひな形は下記からダウンロード可能ですので、ご覧になりながらこの先を読み進めていただくと、よりわかりやすいかと思います。
創業計画書 書式ダウンロード(日本政策金融公庫)
https://www.jfc.go.jp/n/service/dl_kokumin.html
① 取扱商品・サービス
自店にしかない強みを他店との差別化を考えながら書いてみます。コンセプトが明確になっていれば、軸がブレることなく書くことができると思います。
日本政策金融公庫に提出するものであれば、当該記載箇所は簡潔に、メニューの金額の範囲(例:700円~1,500円)を記載すれば充分かと思います。しかしながら、融資を受けるためではなく、ご自身で活用される事業計画書を作成する場合は以下の点も考えておくことが望まれます。
・実際のメニュー案(どんなカテゴリーを用意するか)
・カテゴリー毎のアイテム数やプライスライン(中心価格帯)、プライスポイント(アイテム数の多い価格)
・実際に来店顧客が頼まれる組み合わせ
など
私が事業計画書の作成相談を受ける段階では、メニュー案の作り込み具合は人それぞれです。
しかし、あまりにも先伸ばしして開業直前になってしまっては、資金調達・物件・各種業者の打ち合わせ等で時間を取られメニューに関して十分に検討できな事もあり得ます。
飲食店で成功するためには、当然のことながら、メニューは非常に重要な要素の一つです。融資を受けるための事業計画であればメニュー表記は簡潔で構いませんが、失敗しないためにもご自身で利用される事業計画においてはメニューは時間を掛けて考えておくことをオススメします。
➁必要な資金と調達方法
以下のチェックポイントで確認していきます。
・事業に必要な資金を洗い出す
ご相談を受けるときに、『いくらまで借りることができる?』と聞かれることがあります。これについて、自己資金とのバランスや事業計画書の内容等での目安はもちろんあります。しかし飲食店を永く続けるためには、借りられる金額を算定するよりも、コンセプトに基づくお店に必要な資金は最低限はいくらなのかを、まずは計算してみてください。
借入額が事業に見合わない金額になってしまうと、開業後の資金繰りに大きな影響を与えてしまいます。
なお本来はこの段階で運転資金についても考慮する必要がありますが、それについては、別の記事で解説していきたいと思います。
・自己資金と借入額とのバランスをみる
必要な資金の洗い出しが終わったら現在の自己資金を確認しましょう。資金ゼロでの開業はオススメできません。つまり必要な資金が1,000万円なのに対して、自己資金はゼロであるなら、まずは自己資金を確保するところから始めなければなりません。
反対に、必要な資金が500万円なのに対して、自己資金が600万円あるのであれば多額の借入が必要となるケースは少ないかと思います。次とるべき行動にも影響しますので、必ず上記の確認をしましょう。
・見積書を入手する
上記の確認が終わり、他の事業計画書の記載部分も完成したとすると、見積書が必要となります。融資を受ける際には、各業者(最終注文する業者)の見積書のみをご準備頂くことになります。『○○工事は、知り合いの業者に決めています』と考えられていることもあるかと思います。もちろん知り合いの業者を利用して頂いても構いませんが、『思ったより高くなってしまった・・』と後悔される方も少なくありません。
融資を受ける際には複数の業者から見積書の入手をすることを検討することをオススメします。
日本政策金融公庫の国民生活事業では、個人事業主や小規模事業者の開業を考えている方を対象に、中小企業事業では資本金1,000万円以上の中小企業を対象に融資を行っています。詳細は各支店までお問い合わせください。
(失敗事例)
資金・お金の管理に失敗
(解決の方向性)
2.資金繰り表の作成
資金繰り表とは、お店のお金の動きを把握するための表です。
いくら売上があったとしても、仕入にかかるお金や従業員に支払う給料が用意できなければ、お店を将来にわたって続けていくことはできません。
最近ではクレジットカードの他、電子マネー等の普及、仕入・経費においても掛取引による支払方法など、現金取引が主体だった時に比べ、日々のお金の動きを正確に把握することは難しくなっています。そのため、月次の資金繰り表の予定と実績を作成し、お金が入ってくる時期、出て行く時期を把握し、入出金のタイミングの差による資金不足になるのを防ぎましょう。
下記に月次の資金繰り表の作成方法を記載します。
① まずは資金繰り表の『前期繰越現預金(A)』に前月末の現預金残高を入力します。
② 次に当月に入金される現金売上高、またクレジット振込回収の金額を入力します。ここでの留意点としては、クレジットカードの売上時点ではなく、入金時点で入力をすることです。また支払についても同様に入力をしていきます。
③ ①➁を行うことで予定の翌月繰越現預金が算定されます。こちらがプラスであれば当月に資金難でお支払いができなくなることがありませんが、この数値がマイナスになった際には、予定の見直しを行ってください。
④ ①~➂で立てた予定の計上と同様に実績数値を入れていきます。
このように資金繰りを検討することで、資金不足になることを防ぐことができます。
ダウンロード資料として資金繰り表のサンプルをご用意しております。是非ご活用ください。
今回は、飲食店の失敗事例と共に、事業計画書、資金繰り表の作成ポイントについてお話しさせて頂きました。
事業計画書の作成方法や経営にあたっての不安点など気になることやご質問がある方は、こちらの無料相談フォームよりご相談下さい。
<この記事の著者>
梶田将隆(公認会計士・税理士)
国立大学卒業後、27歳で公認会計士登録。大手監査法人 で金融機関及び製造業を中心に幅広く、かつ数多くの上場会社の監査を担当。その経験を活かし会計指導の他、在庫管理及び原価管理方法などの制度会計以外のアドバイザリー業務を行う。また、セミナー講師も担当し80名の経理担当者から高評価を得る。コロナ禍においては各種給付金の申請サポートで100店舗以上を無料で実施。現在は飲食店専門の公認会計士・税理士として開業時の事業計画書の作成支援から、その後の会計顧問まで受嘱している。