2023.1.20

飲食店の開業時に使える補助金解説

飲食店を経営されている皆様、これから開業されて飲食店を経営する予定の皆様、飲食店専門の公認会計士・税理士の梶田です。

今回は、開業時に使える補助金についてご紹介します。開業時には多くの資金が必要となるため、補助金を活用したいと考えている方も多いと思います。しかし、補助金には多くの種類があり、どの補助金に申し込めばいいのか分からないという方もいらっしゃると思います。現在、飲食店の開業を考えている方へ向けた補助金をまとめていますので、是非ご覧ください。

 

そもそも補助金ってなに


まず初めに、補助金とは『国(経済産業省管轄)や自治体、地方公共団体が、主に事業主を支援する目的で支給するお金』のことをいいます。返済が不要であり、支給額が大きいのが特徴ですが、必ず採択され補助金が支給されるわけではありません。補助金が採択されるためには審査をクリアする必要があります。そのため、各種提出書類を漏れなく提出すること及び事業計画書においてご自身の事業に対する補助金の必要性についてアピールしなければなりません。

今回は、経済産業省の中小企業向け補助金・総合支援サイト「ミラサポplus」から抜粋した飲食店でも利用可能な補助金をご紹介します。

 

 

①ものづくり補助金


【目的】:中小企業・小規模事業者等が今後複数年にわたり相次いで直面する制度変更等に対応するため、中小企業・小規模事業者等が取り組む革新的サービス開発・試作品開発・生産プロセスの改善を行い、生産性を向上させるための設備投資等を支援する。

飲食店の経営を予定されている方は、革新的な製品・サービスの開発や改善に必要な設備やシステム投資等を支援することを目的とした一般型の通常枠に該当される方が多いと思いますので、今回は、一般型の通常枠についてご説明します。

【基本要件】以下を満たす3~5年の事業計画の策定及び実行
・給与支給総額を年率平均1.5%以上増加
・事業場内の最低賃金を地域別最低賃金の+30円以上の水準にする
・事業者全体の付加価値額を年率平均3%以上増加。

基本要件に加えて、税抜き単価50万円以上の設備投資が必要です。生産性向上に向けて飲食店では、厨房機器やセルフオーダーシステムの導入なども可能です。ただ導入をするだけではなく、設備投資を行うことで、どんな革新的サービスを実現することができるのか、また生産性はどのくらい向上するのかが重要です。

常勤従業員数が5人以下の小規模事業者等の場合には、補助率は2/3となり、補助金額は100万円~750万円です。ものづくり補助金では、交付決定を受けた後に、設備投資を行い、基本要件を満たしたかどうかにより補助金の支払が行われます。そのため、小規模事業者等の場合は、補助率2/3を加味した上で、150万円~1,125万円の設備投資に対する資金をあらかじめ用意しておく必要があります。

基本要件を満たしていない事業者については、補助金の返還が生じる可能性があります。
*詳細は公募要領をご覧ください。

(公募要領について|ものづくり補助事業公式ホームページ ものづくり補助金総合サイト (monodukuri-hojo.jp))

 

こちらの補助金は売上が減少したことによって申請できる補助金とは異なり、革新的なサービスや生産性を向上させることが目的ですので、目的に合致した事業計画書を作成されるとよいと思います。

現在では、令和4年8月18日が期限の第11次の応募を受け付けております。申請を予定される方は、申請時点の公募要領のご確認をお願いします。

  

②IT導入補助金

 開業されてから1度でも決算を迎えている方へ向けて、IT導入補助金をご紹介します。飲食店を経営される方の多くは、インボイス対応のための「会計」「決済」の機能やインターネット販売による「EC」の機能を有したデジタル化基盤導入枠に該当される方が多いと思います。そのため、今回はIT導入補助金のうち、デジタル化基盤導入枠についてお話します。


【目的】:中小企業・小規模事業者等のみなさまが導入する会計ソフト・受発注ソフト・決済ソフト・ECソフトの経費の一部を補助することで、インボイス対応も見据えた企業間取引のデジタル化を推進すること。

【対象者】:中小企業
飲食業の場合、下記のいずれかに該当することが必要です。
・中小企業等:資本金・出資金が5,000万円以下又は常勤の従業員100人以下
・小規模事業者等:常勤の従業員5人以下

  ITツール ITツ-ル PC・タブレット等 レジ・券売機
補助額 5万~50万以下 50万超~350万 ~10万円 ~20万円
機能要件 会計・主発注・決済・ECのうち1機能以上 会計・主発注・決済・ECのうち2機能以上 左記ITツールの仕様に資するもの 左記ITツールの仕様に資するもの
補助率 3/4以内 2/3以内 1/2以内 1/2以内
対象経費 ソフトウェア購入費、クラウド利用料(最大2年分)導入関連費など ソフトウェア購入費、クラウド利用料(最大2年分)導入関連費など ハードウェア購入費 ハードウェア購入費

デジタル化基盤導入枠のみにPCやタブレット等、POSレジ、券売機などのハードウェア購入費用や設置費用などを含みます。これらのハードウェアはソフトウェアに加算して導入する場合のみ対象となり、ハードウェアのみでの導入は対象外となるので注意が必要です。

では、具体的にIT導入補助金を活用すれば自己負担額はどうなるか、マルト水谷が提供しているタブレットPOSレジ 『mAIpos(マイポス)』 の料金を例に計算してみましょう。

◆補助金試算例
ITツールとして、mAIposハンディプラン
ハードウェアとして、iPad1台、レシートプリンター1台、キャッシュドロア1台を使用する場合

ITツール合計:203,920円
(内訳)
・サービス加入料: 30,000円
・サービス利用料: 65,460円/年 × 2年 = 130,920円
・導入時設定費用: 43,000円

ハードウェア購入費合計: 82,500円

IT導入補助金想定額: 203,920円×3/4 + 82,500円×1/2 = 194,190円

実質負担額:92,230円

上記は、あくまでも試算になりますので、実際の導入検討の際には、補助金シミュレーターをご利用ください。デジタル化基盤導入類型の補助金申請可能額をシミュレーションできます。

IT導入補助金について デジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型)| IT導入補助金 (it-hojo.jp)

 

現在では、令和4年8月8日が期限の第8次から令和4年10月3日が期限の第12次までの応募を受け付けております。こちらも申請を予定される方は、申請時点の公募要項のご確認をお願いします。

ものづくり補助金やIT導入補助金は、交付決定以後に契約や発注を行う必要があります。交付の決定前に発注や契約、支払を行った場合には補助の対象とはならないので、注意が必要です。

このほかにも、飲食店を経営されている方へおすすめの補助金に、小規模事業者等持続化給付金や事業再構築補助金がございます。

この2つの補助金については、7月5日の「税理士が教えるコロナ禍でも飲食店が利用できる補助金解説」という記事で詳しい内容についてご紹介していますので、そちらも是非ご覧ください。
税理士が教えるコロナ禍でも飲食店が利用できる補助金解説 (010m.co.jp)

 

また、中小企業基盤整備機構の運営する「J-net21」では、創業者向けに都道府県別の補助金や給付金を紹介しております。現在は、愛知県などの県によるもの、名古屋市や春日井市の市によるものもございますので、開業される自治体の補助金があれば是非ご活用ください。
創業者向け補助金・給付金(都道府県別) | J-Net21[中小企業ビジネス支援サイト] (smrj.go.jp)

 

最近の補助金の申請はjGrants(ジェイグランツ)を利用しなければいけない、または利用することにより加点されるケースが多くなっています。
今後、これらの補助金の申請に挑戦される方は、jGrantsにログインするために必要となるID「gBizID」 を取得しておくとスムーズに申請が可能です。

今回は、飲食店を開業される方に向けて現在使える補助金をご紹介しました。上記以外にも詳しい要件がございますので、各補助金のホームページでご確認ください。どの補助金を申請すればいいかわからない方やその他気になるご質問がある方は、別途相談フォームよりご相談をお願い致します。

 

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▶ 筆者紹介

飲食店専門 公認会計士・税理士 梶田将隆

Maruto_Masataka

国立大学卒業後、27歳で公認会計士登録。大手監査法人で金融機関及び製造業を中心に幅広く、かつ数多くの上場会社の監査を担当。その経験を活かし会計指導の他、在庫管理及び原価管理方法などの制度会計以外のアドバイザリー業務を行う。また、セミナー講師も担当し80名の経理担当者から高評価を得る。

コロナ禍においては各種給付金の申請サポートで100店舗以上を無料で実施。現在は飲食店専門の公認会計士・税理士として開業時の事業計画書の作成支援から、その後の会計顧問まで受嘱している。